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脳出血の患者さんが来て、専門施設に転送した。
「吐き気がする」、ただそれだけの訴え。
下痢も出たと言っておられた。
間違いなく腸炎だし、夜だから、入院手続きして点滴始めた。

家族がきた。複数人。みんないい人。
一言「吐く前にめまいがすると言っていました」と。
要するに暗黙に、「頭調べて下さい」なんてやりとり。

医者の頭は腸のバイアス。
レントゲンは、この時間呼び出し。
家族が複数いて、
力関係ちょっとだけ自分のほうが弱くって、
自分はそのとき「いい医者」の仮面かぶってたから、CT撮った。
出血だった。

あとから見直せば、眼球運動だけ、わずかに従えなかった。
麻痺は一切ないし、頭痛もなし。
「こっち見て下さい」に従えないのは、高齢の人だとよくある話。
CT の出血で、眼球運動障害は説明できた。

ご家族の人数がもう少しだけ多くって、
もっと強圧的な人たちだったら、
あるいは自分の防衛機制が発動して、
CT 撮らなかったかもしれない。

集まった御家族が少なかったなら、
あるいは「めまい」を聞いても、
その晩はスルーしたかもしれない。
明日調べましょうなんて。

いずれにしても、ただただ運がよかった。
CT は撮ったけれど、
自分はそのとき、
出血を想定してはいなかったから。
あくまでもそれは、御家族を安心させるための検査と思ってた。

出血見逃した医師が、最近書類送検された。
あの場所には絶対立ちたくないなと思ったけれど、
その入り口は、今さっきまで自分の隣で口を空けてた。

確率論の鉄火場乗り越えるのは、
とにかく敵を作らない振舞いに尽きるんだと思う。
こびへつらうんじゃなくて、
いろんなバイアスから極力自分をフリーにするやりかた。
たぶん意固地さが、過誤への道を開く。

やっぱりきちんとした手順書がほしい。
「この症状聞いた以上は、
絶対この検査やら無いと返しちゃダメ」
みたいな。
記述するだけで、現場はバイアスから自由になれる。

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明日と明後日は本気出す。

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